• 白玉

  • 夜、怪獣が眠りについて静かな時間が流れる

    閉店間際のスーパーに駆け込み材料を買ってきた

    白いチョークを踏み潰したようなかけらが

    袋にたくさん入っている

    こんなものがあんなつやつやの姿になるのか

    にわかに信じがたい

    社会人になってからしばらく

    こんなチョークのかけらをよく見た

    安っぽい紫キャベツのような色の

    黒板消しのケースをあけると

    ぐちゃぐちゃになったチョークが入っていたものだ

    A2サイズくらいの黒板にへたくそな絵と寸法を書き入れて

    写真を撮って、消してはまたくりかえす

    夏には汗でぬれて消した跡が残ったりもした

    かけらをボウルに開けて、水を灌ぐ

    1:1くらいの比率でこねると

    パサパサの固い生地ができる

    失敗したかなとおもったが

    この白い塊はとても素直で

    水を少しずつ入れるとすぐに

    水をまんべんなく取り込んでやわらかくなっていく

    こんな新入社員なら雇いたいくらいだ

    耳たぶくらいの柔らかさになるまで加水を調整していく

    このころには、手にくっついてくるようになり

    お団子サイズ小分けするには少し手がかかる

    仕事に慣れてきて、わがまま言うようになった

    素直な新入社員とでもいうのか

    生地を小さく丸く丸めて、並べて置く

    沸騰したお湯にころころと落としていく

    ぽこぽこと湯に踊らされる白玉たちを

    眺めながめていると

    そのうち、表面に浮き上がってくる

    そこから2分ほどゆでてあげ、氷水に落とす

    氷水に手をいれ、熱が下がっていくのを感じる

    白玉は固い弾力がするイメージだが

    できたてのそれは驚くほどふわふわしていて

    つるつるの肌をしている

    世の中にはストレス軽減グッズと称して、

    ハンドスピナーや無限プチプチなんかが存在しているが

    デスクに一つおいておくなら

    氷水に浮かべたゆでたての白玉に限る

    無限白玉なんてあったりしないかな

    冷えるのを待つ間に、冷たい砂糖水をつくる

    普通はみかんの缶詰やみつまめの缶詰なんかと

    あわせたりするんだろうが

    じつのところ、砂糖水が一番おいしい

    砂糖水は水に気が済むまで上白糖を注ぎ

    かき混ぜるだけのものだ

    昨今、スイーツといえば

    和三盆とか黒糖が使われて

    上品な甘みだとかいうけれど

    上白糖が一番上品なんじゃないかと思う

    お気に入りの茶碗に砂糖水

    氷を一つ浮かべて冷えた白玉を落とす

    砂糖の甘さと餅米の味

    つるつるした舌ざわりと柔らかな弾力

    おにぎりでいったら塩むすびのような甘味だけれど

    暑苦しくて静かな夜に食べるにはぴったりな食べ物