• かいがら

  • おおきなガラスボウルに水をはって

    かいがらを洗う

    今日はあさりの甘い出汁をとりたいと思って

    キッチンに立っている

    アルミのフライパンにあさりをならべ

    100ccくらいの水と日本酒をすこし

    酒蒸しといえばしょうがを入れなきゃと

    細く、薄く切り出す

    強火で煮立たせ、かいがらを開く

    ここで一旦、火を止める

    身にはなるべく火を入れたくない

    ぷりぷりなまま食べたいからだ

    かいがらをつかんで鍋のふちにこつんとすると

    身がぽろりとおちる

    こつん、こつん、こつん

    旬のあさりは、かいがらいっぱいにつまっていて

    身がぷっくらしていてかわいい

    クッション代わりに横になってみたいものだ

    このあたりのあさりは、

    高級店でも欲しがるくらいに美味しいみたい

    近年の環境配慮によって

    水質が改善され漁獲が減っている

    自然とはあまのじゃくなものだなと思う

    人間だって先進国病なんていわれて

    豊かになれば高齢化が進んで

    やがて減っていく

    わたしたち似た者同士だね

    君たちも暗い砂の中で

    子供2人は難しいかななんて

    家族会議をしているのかい

    豊かさとはいったいなんなんだろう

    身をはずしおえて少しだけ調味する

    かいがらは塩蔵物みたいなもので

    少しづつ海の香りや塩分を

    取り込みながら成長していく

    かいがらを炒めたりなんかすると

    塩味や香りが溶け出してくる

    イタリアではgusto≒味わいという言葉があって

    自然の味わいの尊重する文化があるようだ

    gustoを感じながら

    薄口しょうゆをひとさじ入れる

    やさしい口当たりになるように少し水をいれたり

    塩や顆粒だしをいれてもいい

    あさりの出汁が引き立つようすこしだけ

    芹や三つ葉なんかを細かく切って

    ぱらぱらとまぶす

    しょうがもすこし

    ほかほかのごはんを茶碗によそいですこし冷ます

    常備菜の漬物を小鉢にいれて色違いの箸並べる

    あさりの汁はごはんにかけて食べる

    汁もごはんも少し冷ましているのは

    温かいくらいになってするすると食べられるからだ

    温度は心地よくしたい

    あさりはぷりぷりで、甘みと海の香りを感じる

    薬味のさわやかな香りと

    しゃりしゃりとした食感が心地よい

    温かさが体に染みて

    体が目覚めていく

    この料理は江戸時代の庶民の食事で

    当時は冷蔵技術がなく魚は傷みやすい

    肉食が禁止だった時代ということもあり

    庶民にとっては手頃ながらも

    ぜいたくな食事だったようだ

    この恵まれた時代に食べても

    幸せの詰まった料理だと思う

    あなたと笑いあって食べられればそれでいい

    片付けをしていると

    かいがらは生ごみに捨てないでと怒られる

    かいがらっていったいなにごみなの

    貝塚でもつくればいいの